TANAKA DENSHI TWELVE #11

活躍を見える化する
こだわりの評価制度。

「前のめりで『自分が行きます』って争いが起きてほしい」

田中電子の評価制度は、商材ごとのポイント制と偏差値化で“今の立ち位置”を可視化し、48段階の等級と連動してベース給与にも反映される。一方で、数字だけを追わせないために、フロア対応や新人教育、事務作業、リスク対策など“見えにくい貢献”も拾い上げる設計に。田中電子の仕組みの裏側を語ります。

評価制度の話をちゃんと残しておきたい

今日は大事なテーマとして評価制度のこだわりを整理しておきます。

僕自身、この業界で年収を上げたい、お金は大事だよね、という話もしてきました。ただ、数字が取れれば何でもいい、は絶対に違う。心得の話ともつながりますが、そういう考え方が評価制度に反映されていないと、結局は長く働けないと思っています。

入社1年目は目の前の仕事に必死で、評価制度を深く考えない人も多いと思います。けれど、3年目、4年目になると、何をやったら評価されるのか、役職が上がるメリットは何なのか、と気になってきます。

だからこそ、評価制度は曖昧にせず、働く人が納得できる形にしておく必要があります。

一番のこだわりは
活躍を見える形にすること

コミュニケーションは、お客様に対してだけではありません。同じ店舗で複数のメンバーと働く以上、店舗内のコミュニケーションも重要です。

一致団結して、という大げさな話をしたいわけではありません。ただ、人を過小評価しないで、相手を思いやったコミュニケーションを取ろうとする姿勢は大事です。これは上司部下だけでなく、同僚同士でも難しいところなので、なおさらだと思っています。

頑張りは中身よりまず投下時間

僕が評価制度で一番大事にしているのは、活躍を見える形にすることです。言い方を変えると、生産性を可視化することです。

携帯電話業界のショップは、求められる商材や指標がとにかく多いです。あれもこれもやって、となる世界だからこそ、それぞれが評価されないといけない。何がどれくらいの成果になっているのかが見えないと、やる気も続かないし、納得もできません。

全員がカリスマ店長の細かい指示で動けるわけではないので、個々の活躍を仕組みとして可視化することにこだわっています。

年齢や入社歴で差をつけない

まず明確にしているのは、年齢や入社歴が評価に影響しないことです。いわゆる年功序列の要素は、等級の評価に一切入れていません。

そのうえで、等級は48段階に分けています。新人はトレーニーから始まり、上がる・下がるの基準は設計しています。ただ、音声で全部を説明するのは難しいので、今日は僕が強くこだわっている部分を中心に話します。

今月の自分の立ち位置が分かる
総合力ポイント

評価の中心にある仕組みのひとつが、社内で総合力ポイントと呼んでいるものです。イメージとしては、ネットゲームのレーティングスコアみたいなものです。

商材ごとに何ポイント、という重み付けが定まっていて、機種変更は何ポイント、乗り換えや新規契約は何ポイント、というように加算していきます。

ただし、累計といっても月単位で締めてリセットします。長くいるだけで有利になって年功っぽくなるのは避けたいので、その月の能力と成果で立ち位置が変わる設計にしています。

全員に開示するから公平性が生まれる

ポイントは週に2回更新して、店舗スタッフは全社員に開示しています。店舗系のメンバーなら、1位から下位まで立ち位置が分かる形です。

強い人も、もう少しの人も、はっきり見える。厳しさはありますが、そのぶん公平性がある仕組みだと思っています。

直接売上が出ない仕事も拾えるように

店舗では、カウンターでの手続きだけじゃなく、フロアで案内するなど、直接売上が生まれにくいポジションも発生します。そういう仕事が評価されないと、不満が溜まるし、役割が回らなくなります。だから、フロア担当などの回数をログで取り、貢献的労働として拾う設計にしています。

さらに、部門ごとに最低基準を設けて、偏りすぎるとランクダウンする、といった仕組みも入れています。バランスよく成果を出せる人が評価されるようにしたいからです。

新人教育や事務作業も順位付けして加点

直接の販売だけでは拾いきれない貢献もあります。新人教育、店舗内の事務作業、情報を扱う仕事としてのリスク対策、クリンネスなど、いわゆる間接労働です。

これらについては四半期単位で、店舗内で「貢献している人」を順位付けしてもらい、平均点が高い人に加点できる仕組みも用意しています。

売れれば何でもいい、にはしたくない。ただ販売なので、売れなきゃダメでもある。この矛盾を、制度でバランスさせたいと思っています。

ポイントは偏差値に変換

ポイントは評価に使いますが、最終的には社内で偏差値化します。受験の偏差値と同じイメージで、40が低め、70が高め、という感覚で捉えられるようにします。

500ポイントと言われてもピンとこないけれど、偏差値58.2と言われたら、60に近いから頑張ろう、となる。学生時代に慣れた数字だから、立ち位置がイメージしやすいんですよね。

勉強の偏差値は低かったけれど、社内の販売力偏差値は高い、という成功体験にもつながります。

報酬と成長を切り分ける評価の考え方

インセンティブは商材ごとに詳細に定めています。これは毎月計算しますが、支払いは年2回の賞与のタイミングで蓄積分を支給します。

ただ、インセンティブだけだと、インセンティブがない仕事をやらなくなる、といった歪みが出やすい。だから、ポイント評価も入れて、会社や店舗が求めることにも重み付けして、やることで評価されるようにしています。

まとめるとこうです。

  • ・販売の成果はポイントと偏差値で見える化
  • ・お金は商材ごとのインセンティブで支払う
  • ・評価の全体は販売だけでなく別の採点も含めて見る

当たり前を当たり前にするために、
心得は別の採点で

等級評価は四半期に一回行います。販売力はその中の一要素で、プロフェッショナルスキルなど定性的な部分も含めて評価します。

基本給や賞与のベースは等級で決まります。等級が上がればベースが上がり、下がれば下がることもあります。役職は等級とは別で、役職手当として設計していますが、役職に就くためには一定以上の等級が必要、という条件も置いています。

  • ・日々の販売のインセンティブ
  • ・四半期の等級で決まるベース
  • ・短期と長期を分けて考えられる設計

僕はこの切り分けが大事だと思っています。

完璧はないから改善し続ける

評価制度は、毎月更新しています。中身を変えるという意味です。ポイントのレートなどは、売るべきものや新料金プランが変われば重み付けも変わるからです。

変化の激しい業界では、制度を固定するとすぐに現実とズレます。だから更新していくことが大事だと思っています。

矛盾ゼロの完璧な評価制度は存在しないと思っています。だから、毎月のWeb研修会でGoogleフォームのアンケートを取り、改善要望を必ず集めています。

評価制度へのコメントは多いです。例えば、この商材は時間がかかるのにポイントが低すぎる、という意見。そういう声が出たら、コメントを返して詳細を聞き、矛盾があるなら検討します。

もちろん自分が得意な商材の点数を上げたい交渉も混ざるかもしれないので、全体感を持って判断しますが、声が上がること自体は嬉しいです。社員と一緒に制度を育てる感覚が大切だと思っています。

ワンチーム条項に込めた想い

制度を作ると、想定していたリスクが現実化します。ポイントにないものをやらない、という動きが出始めたこともありました。

そこで、ポイントにしにくいけれど必須の行動項目をまとめ、ワンチーム条項という名前をつけました。店舗の成績は決まるけれど個人の成績は決まらない要素があり、それが一定基準以下だと、店舗メンバー全員のポイントを下げる仕組みです。

連帯責任にすることで、個人のポイントに直接関係なくても、やらなきゃいけないことがちゃんと回るようにしています。

人数が減っても頑張れたら潤う仕組み

現場にいると、来月から6人だ、きつい、という状況は誰でも経験があると思います。負の感情も生まれやすい。

でも、人数が少ない状態で同じ売上を達成できたら、1人あたりはもっともらっていい。そう思って、店長の評価にも1人あたりのポイントを入れたり、店舗単位で1人あたりが上がったら、一定基準で店舗メンバー全員のインセンティブを5%増やす、といった仕組みも入れました。

人が減ってきついのに給料が変わらない、ではやってられない。そうならないように、声が聞こえてきたら調整していく。そこも制度で支えたいと思っています。

この制度が馴染んできた結果、今はちょっと余裕あるので、もう1人少なくても回りますね、という声も出てきました。減らしたいという言い方が目的ではなく、1人あたりの生産性の考え方が浸透してきた、という意味で僕は嬉しかったです。

前のめりな競争が生まれると
お客様にもプラスに

制度設計の狙いは、前向きに頑張れる空気を作ることです。最近は、予約のお客様は自分が対応します、という前のめりが増えてきました。

昔は、お客様がいるのに誰行く、みたいな空気が出ることもあった。でも今は、いい意味で競争が起きてきている。お客様から見ても、ぜひ自分が対応したいと言ってくれる人のほうが良いに決まっていると思っています。

まだ理想には遠い部分もありますが、理想に近づけている最中だと思っています。

自分のための頑張りが
結果として組織のためになるように

全体のため、チームのため、という理想は大事です。でも、組織側が個人にそれを求めるのは難しいとも思っています。組織が「組織のためを優先せよ」と言っても、反発が起きやすい。国ですら難しいですよね。

だから僕が大事にしているのは、仮に個人が自分の利益のために動いていたとしても、結果として組織のためになる制度づくりです。

自分のために頑張ったら、結果として組織も潤って、感謝される。そういう成功体験を積むと、組織のためになることが自分のためにもなる、と後から気づいていく。その順番が現実的だと思っています。

今回の説明が、その気づきのきっかけになれば嬉しいです。

話し手

田中 秀司

田中電子株式会社 代表取締役社長

1990年生まれ。田中電子の二代目社長。27歳で社長就任後、第二創業期を牽引し、46店舗まで事業を拡大。創業40年以上の歴史と若い価値観を融合させ、通信キャリアショップ代理店として日本一を目指す。

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