TANAKA DENSHI TWELVE #8
営業というと“ピリピリした環境”を想像しがちですが、田中電子は真逆。怒りや恐怖ではなく、言語化と対話を軸にしたコミュニケーションを重視しています。部活制度、達成会、上司の奢り制度など、人間関係の「潤滑油」をどう整えているのかを語ります。
「営業の会社で、日本一を目指す」と言うと、ゴリゴリでピリピリした空気を想像されがちだと思います。ノルマや売上目標があって、上司が厳しく詰めてくるようなイメージですよね。
ただ、客観的に見ても当社は、そのイメージに比べると雰囲気は柔らかい方だと思っています。もちろん、成果に向き合う厳しさがないわけではないです。ただ、雰囲気を悪くする厳しさは極力なくしたい、というのが私の考え方です。
私が社内で強く言っているのが、厳しさは必要だけれど、怒りは要注意だということです。
怒りや恐怖で人をコントロールするのは、手っ取り早く人が動くからこそ、やってしまいがちです。ただ、せっかく言葉を使えるのに、怒りだけで動かすしかない上司は、言語化の力が足りないまま上司をやっているようなものだと思っています。
それに、不機嫌で周りを制圧するタイプの上司も、典型的に良くないです。周囲が「この人の機嫌を整えなきゃ」と内側に矢印が向いてしまうので、組織やお客様に向けるべき意識がズレます。怖さや不快感で人が動いてしまうのは事実ですが、それを前提にするのは違う、という立場です。
理屈で向き合う厳しさは必要だと思っています。うまくいかなかった原因はどこなのか、どうすれば改善できるのか。そこに焦点を当てるべきです。
逆に、怒鳴られたり理不尽さを浴びたりすると、頭の中は「謝る」「やり過ごす」に寄ってしまいます。そうなると、本来やるべき改善につながらない。感情の動物である以上、怒りをゼロにするのは難しいですが、できる限りコントロールした上で、思考の方向を正しい場所に戻す。それがプロとしての厳しさだと思っています。
当社では、全店舗をつないで、1日のシフトリーダーを集めて、私も出て、5分だけの時間を取っています。長い朝礼ではなく、短い時間で、会社として大事にするコミュニケーションのスタンスを確認する場です。
そこで共有している内容の一つが、機嫌が良い時に機嫌が良いのは当たり前、仕事中は明るく振る舞えるのが大人でありプロである、挨拶に人柄が現れる、といった考え方です。
あとは、部下は上司の話を聞いていないことが前提だ、という話もします。1回言っただけで伝わるなら上司はいらない、という感覚ですね。「この前言ったよね」という言葉を必殺技みたいに使わない。その前提で、伝え方を工夫し続けることが大事だと思っています。
コミュニケーションは大事ですが、慣れ合いが良いとも思っていません。ビジネス上の仲間なので、必要なことを言い合える関係であるべきです。
ただ、業務上の情報伝達だけで成立している関係は、私は人間関係として弱いと思っています。ちょっとした雑談や冗談が言えるかどうかは、仕事上で言いたいことを適切に言えるかに相当関わってきます。
日常業務が忙しくなるほど、雑談する余裕はなくなります。生産性が高いほど、コミュニケーションが減りがちです。だからこそ、業務内のコミュニケーションを大切にしつつ、業務外のインフォーマルな場も潤滑として用意しておく、というスタンスです。
当社では、希望者が自由に作って活動できる部活があります。
部として認められれば、コート代やボール代など、活動費を会社が負担します。野球部、フットサル部、テニス部、バレーボール部、バスケ部、卓球部、バドミントン部など、学校みたいなラインナップになっています。
一方で、線引きもしています。部と同好会の違いは、経費が出るかどうかです。例えば釣りは同好会で、経費は出ない。ラーメン部やディズニーランド部のように、実質的に食事代や娯楽費の補助になってしまうものは、部活動とは違うよね、という判断です。
文化系は課題で、音楽系などはまだ少ないので、今後増えていくと面白いと思っています。eスポーツのように、会社として看板を背負って大会に出るような形なら、部として成立する可能性もあると思っています。
「飲みが多い会社ですか」と聞かれると、決して多くないです。店舗ごとにお酒好きの多さで違いはありますが、文化として毎週のようにある、という感じではありません。
会社としては、3ヶ月ごとに店舗の目標の達成状況に応じて、1人あたり一定額の範囲で、食事を経費で行ける仕組みがあります。お酒が必須ではなく、飲む人も飲まない人も楽しめる形で使われています。
強制ではなく、あくまで「お疲れさま」のタイミングとして、3ヶ月に1回くらいなら自然に機能するよね、という感覚です。
上司として、リラックスした場で話した方が良いと判断する場面はあります。ただ、飲みをしないと理解できない、という状態は良くないので飲みはあくまで潤滑です。
その上で上司が部下に何かを奢る場面を上司のポケットマネー前提にしないように一定額まで会社が補助する仕組みも用意しています。名前もアルコール前提にしないように変えています。上司側が使える枠として、必要に応じて活用できる形です。
今回の話の中で印象的だったのは「雰囲気がいい会社の特徴は、ちゃんとルールがあること」という視点です。私もその通りだと思っています。
自由で仲良しなだけが雰囲気の良さではありません。何を大事にするかが明示されていて、何で評価されるかが整っていて、目標に向かってチームとして進めるから、結果として雰囲気が良く見える。
雰囲気がいいと言われるからといって、仕事が楽という意味ではありません。成果を出す人には評価と還元があるし、そのために向き合うべき厳しさがある。その土台の上で、理不尽さや恐れがなるべく生まれない状態を作りたい、というのが私の考えです。
雰囲気が良いと言われる背景には、価値観の共有や評価の仕組みがあるはずです。そこは、田中電子に少しでも興味がある方なら確実に気になる部分だと思うので、次回きちんと話していきます。
1990年生まれ。田中電子の二代目社長。27歳で社長就任後、第二創業期を牽引し、46店舗まで事業を拡大。創業40年以上の歴史と若い価値観を融合させ、通信キャリアショップ代理店として日本一を目指す。