TANAKA DENSHI TWELVE #9

プロか詐欺か、その境界線。
大切にしている社員の心得。

「プロか詐欺か。その境界線は理由を説明できるかどうか」

営業の世界で、つい曖昧になりがちな「正しさ」。田中電子では、それをあえて言葉にしています。強い言葉の裏にある、現場を守るための本音と覚悟を語ります。

「社風」ではなく、その奥にある「心得」

今回話したかったのは、会社の価値観や心得についてです。

「社風はどのような社風ですか」という質問は求職者の方をはじめ、いろんな場面でよく聞かれます。みんな雰囲気を知りたい。でも雰囲気って言語化しづらいんですよね。

だから僕は、社風を突き詰めると「会社としてどういう考え方を大事にしているか」に近いと思っています。真面目な話も増えるかもしれませんが、伝えられるところまで伝えようと思いました。

「現場が直接顧客」本部の心得の冒頭

田中電子では、いくつかの心得を定めています。
リーダー心得、全スタッフに向けたプロとしての心得、本部としての心得、同じ内容もあるんですが、一部は役割によって変えています。立場が違えば、最初に揃えるべき視点が違うからです。

本部の心得の冒頭に置いているのが、次の考え方です。

  • ・本部メンバーの直接顧客は現場メンバーの皆さんである
  • ・現場メンバーの活躍によって我々の仕事が存在している

これは携帯電話の会社だけの話ではなく、現場と本部が分かれている組織ではありがちな問題への対策でもあります。本部だから偉い、という誤解が生まれやすい。

僕は現場から始まっていることもあって、そこは良くないと思っています。本部の仕事も大事です。でも、イコール偉いではない。現場の方々が一生懸命お客様に対応して、お客様が買おうかなとなって、そこでお金が生まれる。荒利益を生むのは現場です。

本部は残念ながら荒利益を使う側でしかない。間接部門として支える役割です。ここをちゃんと理解しておこう、という意味で最初に置いています。

現場と本部のすれ違いは危険

この前提がないと、現場側は「分かってない本部からキャンペーンやれって言われた」と感じやすい。本部側は「期限を守れない店舗がある」と言いやすい。

お互いが専門外のところで相手を責めてしまう。Excelのやり取り一つで「そんなこともできないのか」と言ってしまったり、現場は現場で別の不満を言ったりする。人間は感情の生き物なので、起きちゃうんですよね。

ゼロにするのは難しいかもしれませんが、スタンスとして「あるべきはこうだよ」を示すことは大事だと思っています。

リーダー心得①
「言っただけでは動かない」

リーダー心得の最初に来るのは、この一節です。

  • ・言ったとしても聞いているとは限らない
  • ・聞いていたとしても理解しているとは限らない
  • ・理解していたとしても賛成しているとは限らない
  • ・賛成していたとしても腹落ちして行動に移すとは限らない

これは、とある書籍の一説なんですが、僕はその通りだなと思っています。言われないと忘れるんですよね。

1回言っただけで部下が動かなかったり、忘れてしまったりするのは、普通そんなもんだ。だからこそリーダーが必要なんだ、という話につながります。

リーダー心得②
「爽やかにしつこく、明るい執念」

次に出てくるのが、これです。

  • 理想的なコミュニケーションスタンスとは

    爽やかにしつこく 明るい執念

人を動かすには、思っている以上に何回も言う場面に直面します。だから、何回も言える自分のスタンスを持っていないと続かない。言う側も疲れるし、聞く側も何回も聞ける言われ方じゃないといけない。

甘くあれ、という意味ではありません。厳しさは大事。ただ、柔らかさと厳しさは混在できるかもしれない。難しいですが、目指したい姿です。

リーダー心得③「人のせい、過去のせい、環境のせいにするのをやめよう」

リーダー心得には、こういう項目もあります。

  • ・人のせい、過去のせい、環境のせいにするのをやめよう
  • ・前工程、後工程のせいにしない
  • ・確認不足、伝達不足、教育不足

もちろん人のせいなことはあります。責任を明らかにするのが必要な場面もあります。でも、人のせいにして民事訴訟を起こして、裁判をして、その間に事業が進むかというと進まない。結局、自分としてできる部分に集中しないと前に進めないんです。

完璧に徹底できる人は相当すごいですが、まず「そう思い続ける」ことが大事だと思っています。

変化の激しい業界だからこそ
「形骸化を放置しない」

もう一つ、実務的な心得として大事にしているのがこれです。

  • 形骸化を放置しない

    古くなって改善が必要な運用に気づいたら、見て見ぬふりせず相談報告しよう

携帯電話の業界は、オペレーションの変化が激しい。先週やっていたことが今週いらなくなる、ということが起きます。すると、形骸化したやり方が発生しやすいんですよね。

だから、現場で頑張ってくれている方々が「これ微妙ですよ」「意味ないですよ」と言える環境が大事です。そのためには、会社側のスタンスとして、怒りで支配しない、言いやすい空気を作ることも必要になります。

実際に、当社は毎月1回、全社員さん対象の研修をしていて、必ずアンケートを取っています。改善すべき現場オペレーションがないか、目安箱のように集めて、コメントは全部目を通しています。経営会議でも確認して、反映すべきものをピックアップし、必要なら詳細ヒアリングして改善につなげています。

数字の世界だからこそ
「経済と道徳」の線を引く

営業販売の世界は、数字をやらないといけない側面があります。積み上げの世界なので、油断すると「数字さえ取ってれば何でもいい」という言葉が強いエネルギーで浮上してきます。

一方で、道徳的な指摘が得意な人もいます。ただ、それが販売実績と結びついていないケースも世の中にはある。そういう中で、方向性を示す言葉として入れているのが、この一節です。

  • ・経済なき道徳は寝言であり
  • ・道徳なき経済は犯罪である

僕の名言ではないですが、バランス感覚の言葉として優秀だと思っています。刺激的な表現ですが、メッセージとしては刺さる。とはいえ、興味がない人に落とし込むには時間がかかるだろうな、とも思っています。

「センス」を「技術」に落とし込む、
全員向けの心得

リーダー心得は主に店長などシフトリーダー向けに伝えますが、全社員向けの心得もあります。一般向けは営業接客者としてのプロの心得で、当たり前の項目もあります。清潔感のある身だしなみを維持する、などは当然ですね。

特徴的なのは、コミュニケーションを技術として言語化している点です。

  • 敵意解除のテクニック

    ミラーリング、自己開示によって、お客様が抱いている敵意を解除し、知人のような関係構築の土台を形成する

  • 認める力

    褒め言葉や、お客様の意見に対して「他の方にもよく言われます」などの正解認定を通して、承認している姿勢を伝える

  • 感情表現

    表情表現が苦手であれば、言葉にして表現する

できている人ほど、なぜ自分ができているのか分かっていないことがあります。センスの問題にされがちですが、要素を言葉にすれば技術になる。そういう意図で入れています。

お客様の心に「?」を生まない

  • ・提案や手続きの説明をするときに、理由や背景をしっかり伝えて、お客様の心に「?」を生まない。

これも心得に入れています。

通信キャリアショップの説明って、少しでも「今これ何なんだろう」と思われた瞬間に、ストレスに直結します。「?」が放置されると、やだな、という気持ちに切り替わってしまう。だから、そこを放置しないということです。

「あなたはプロか詐欺か」

  • ・根拠なき誘導、あえて選択肢を隠す、嘘につながるような不正な提案をしないことを徹底する。

難しい言葉で言うと、有利誤認、事実不告知、不実告知につながる提案はNG、という話です。でも、そういうコンプライアンス用語のままだと刺さらないこともある。

言葉を柔らかく、分かりやすく置き換えるだけで「うわ、大丈夫かな、俺」と不安になるくらい刺さる。営業をしていると揺らぐ瞬間が出るからこそ、徹底したいという意味で入れています。

売れる人ほど、ちゃんとしてほしい

僕は「売れれば何でもいい」という雰囲気は作りたくありません。売れる人は優秀です。でも、売れる人こそちゃんとしなきゃいけない。影響力があるからです。

成績を上げて、なおかつちゃんとした人でいる。大谷翔平みたいに、という話も出ました。簡単ではないけど、目指す姿としては分かりやすいと思っています。

見られている前提で仕事をする

僕自身の感覚として「嘘で固めたプレゼンは一瞬で見抜かれる」と考えています。

お客様は鵜呑みにしません。調べたり、考えたりします。だから、ダメなポイントを先に言うとか、「僕はこう思う」と主語を明確にするとか、細部の要所を見られている前提で話す。そういう姿勢が大事だと思っています。

監視カメラで後から等速で全部見返されて、全部突っ込まれるくらいの気持ちでやる。それくらいの自覚を持つと、変にごまかさなくなる。

「天は見ている」「神仏は見ている」という概念の真偽はさておき、見られている前提で過ごそうという考え方自体には意味がある。僕はそう思っています。

話し手

田中 秀司

田中電子株式会社 代表取締役社長

1990年生まれ。田中電子の二代目社長。27歳で社長就任後、第二創業期を牽引し、46店舗まで事業を拡大。創業40年以上の歴史と若い価値観を融合させ、通信キャリアショップ代理店として日本一を目指す。

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