TANAKA DENSHI TWELVE #5

AI時代でも営業は“大正解” 時代に左右されない営業の魅力

残るのは
「人が人にやってほしい仕事」

前回は業界の話をしましたが、今回は職種の話です。携帯電話業界がいいというだけなら、キャリアに入るという選択肢も当然ありますよね。では、なぜ私は販売代理店で、しかも営業販売という職種を「大正解だ」と言い切るのか。世の中にある不安や先入観も含めて、筋道立てて整理しておきたいと思います。

人口が減る日本で
仕事選びの前提はもう変わっている

私が前提に置くのは、仕事選びを語るなら未来を見ないといけないということです。しかも「いつか」ではなく、もう目の前に来ています。

少し前まではAIで消えるのはドライバーや工事現場など、いわゆる作業系の仕事だというイメージが強かったと思います。ところが今は、逆にデスクワーク側の方が影響を受けやすいと言われる流れも出てきました。どの仕事が取られにくいかを、ちゃんと考える必要がある時代です。

結局残るのは
「人が人にやってほしい仕事」

私が思うに、AIに取られにくい仕事には共通点があります。それは、人間が人間とコミュニケーションしたいという欲望がなくならないことです。

どれだけAIが優秀でも、担当してほしいのが人間かどうかは別問題です。極端な例を挙げるなら、儀式や弔いのように、人が人であることを求める場面がありますよね。そういう領域は、自動化できるかどうか以前に、そもそも人間が望まない。

私はこの「人間に担当してほしい」という感情こそが、未来に残る仕事の条件だと思っています。

営業は
「買う気がなかった人を動かす」仕事

営業販売は、まさにコミュニケーションワークです。ただ一口に営業販売と言っても幅は広く、難易度が高い営業や販売であればあるほど、人が担当し続ける領域になります。

営業というのは、最初から買うつもりだった人に渡す仕事ではありません。まだ買う気がなかった人が、会話を通じて納得し「それなら買おうかな」と意思決定する。私はこの領域は、AIに置き換わる可能性が低いと見ています。

道具が変わっても、人間は変わらない

テクノロジーは驚くほど速く進化します。でも人間は、そこまで急には変わりません。

私はよく例え話をします。戦国時代に槍の名手がいたとして、鉄砲が入って戦い方が変われば、槍の価値は下がります。これは道具に依存した仕事が、道具の変化で価値を失う例です。

一方で、武器商人や将軍のように、相手を動かし、仲間をまとめ、状況を読んで意思決定する側の仕事は、道具が槍から鉄砲に変わっても本質は変わりません。私は営業も同じで、道具や流行に左右されにくいスキルだと思っています。

「営業って怖い」の正体は
売ることへの罪悪感

営業販売には、世間的にネガティブなイメージがあります。ノルマがきつい、クレームが大変、押し売りしそう。そういう印象を持つ人が多いのも事実です。

私はここに、ひとつ大きな誤解があると思っています。

たとえば料理人に「料理ができなかったら話にならない」と言っても、誰も怖がりません。水泳選手に「速く泳げなかったら価値がない」と言っても、やるべきことは練習だと理解できます。

ところが営業になると「売れなかったら話にならない」と言われた瞬間に、なぜかピリッとする人が多い。ここで起きているのは、売ることそのものに罪悪感が混ざっているからです。押し売りや詐欺のイメージと、営業という行為が分離されていない。

私はこれが、営業が不人気になりやすい根っこだと思っています。

営業は悪ではなく「善」

押し売りや無理やり契約を取る行為は、当然ダメです。これは悪です。

でも営業や販売という行為そのものは、私は”善”だと思っています。なぜなら営業の始まりは、人間が分業を始めた瞬間にあるからです。

火を起こせる人がいて、別の人が水を汲めるなら「君は火を頼む、僕は水を持ってくる」という提案が生まれる。これは価値交換であり、分業を前に進める行為です。物々交換になっても、通貨経済になっても、本質は同じです。

営業がなければモノもサービスも広がらず、人類の営みは進みません。だから私は、営業がなくなった歴史はないし、これからもなくならないと考えています。

営業がしんどく見えるのは、売る=押し売りのように混ざってしまうからです。

押し売りはダメ。営業は全。ここを分けて考えられるようになると、営業販売は健全にスキルを積み上げられる世界になります。陸上選手がドーピングを考えるのではなく、練習でタイムを縮めるように、正しく強くなる道が見えるようになります。

誰でもできるように見えるからこそ、
差がつく

営業は「誰でもできそう」に見られがちです。専門学校があるわけでもなく、いろいろな人が営業を名乗れる。だから価値が軽く見られる。

でも私はむしろ、そこがポイントだと思っています。営業は誰がやるかで差がつく世界です。そして、正しく積み上げれば偏差値上位に行ける余地が大きい。派手な才能がないと勝てない世界ではなく、真面目に積み上げた人が上に行ける世界です。

その結果として、評価も収入も上がっていきます。私はこれは、これからの時代にかなり現実的な勝ち筋だと思っています。

営業スキルはリーダーや経営にもつながる

営業のスキルは、お客様に対してだけのものではありません。私は、マネジメントも本質は近いと思っています。

相手が顧客か、チームメンバーかの違いで、心から動いてもらうために何をするかという構造は似ています。営業ができるようになると、いいリーダー、いい上司の基礎が手に入る。人生を豊かにする、という意味でも営業が避けて通れないという話は、私は納得しています。

だから営業販売を選ぶのは大正解

まとめると、私が営業販売を大正解だと思う理由はこうです。

  • ・AI時代でも、人が人に求める仕事は残る
  • ・営業はコミュニケーションの仕事で人が担当し続ける領域である
  • ・道具が変わっても、人間を動かす本質は変わりにくい
  • ・押し売りと営業を分ければ、健全に強くなれる
  • ・誰でもできそうに見えるからこそ、差がつき、上に行ける
  • ・営業はマネジメントや経営の土台にもつながる

私は少なくとも、そう思っているからこの道を選んでいます。

話し手

田中 秀司

田中電子株式会社 代表取締役社長

1990年生まれ。田中電子の二代目社長。27歳で社長就任後、第二創業期を牽引し、46店舗まで事業を拡大。創業40年以上の歴史と若い価値観を融合させ、通信キャリアショップ代理店として日本一を目指す。

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